自律訓練法のやり方
自律訓練法とは
自分で出来る過敏性腸症候群の治し方を探しているならば、これから教える自律訓練法がお役に立つ事も多いです。自律訓練法は過敏性腸症候群の改善において、役立つ心理療法です。自律訓練法とは自分で自分に暗示をかけてリラックスさせる方法です。20世紀の初めに、ドイツのシュルツ博士が作ったものです。
自律訓練法は寝て行う方法と、座って行う方法がありますので、座って行う方法をマスターしてしまえば、過敏性腸症候群の方にとっては、とても心強いと思います。なぜなら過敏性腸症候群の方は、学校、職場など座っているような場面で緊張する事が多いからです。だから例えば教室で座っている時に、この自律訓練法を行えば、気持ちも落ち着いて来ますので、お腹も落ち着くようになります。
自律訓練法を行う上での注意点
・受動的に暗示をかける事
暗示をかける時は、焦って「落ち着け!」とばかりに積極的に暗示をかけてはいけません。すると逆効果になります。だから自然と落ち着くまで待つような感じの受け身の姿勢で暗示をかけて下さい。その方が暗示にかかりやすいのです。これは自律訓練法で行う全ての暗示に共通して言える事です。
・手足の全体まで暗示をかける事
暗示の中で言う手と足の部位は、手の平だけでなく腕の付け根までの腕全体を含みます。同じく足も足先だけでなく太股の付け根まで、足全体を含みます。
・立ち上がる前に消去運動を行う事
自律訓練法が終了後は、立ち上がる前に必ず消去運動を行って下さい。それを行わないで急に立ち上がると、ふらついて倒れる恐れがあるのです。
自律訓練法のやり方(座る方法)
①まず椅子に座って下さい。足は肩幅程度に開き、両手を太ももの内側に軽くおきます。この時、太ももの温かい体温が手の平に感じるようにします。そして目を閉じます。
②次に「私は落ち着いている」と心の中で自分に暗示を2~3回かけて下さい。この暗示は「安静暗示」と言います。この時は先ほども書いたように、焦って「落ち着け!」とばかりに、意志の力で落ち着かせようとしてはいけません。そうではなくて、受動的な態度で自然と落ち着くまで待つような感じで暗示をかけて下さい。その方が落ち着きやすいのです。
③次は「両手足が重い」と2~3回暗示をかけます。これは「重感練習」と言います。この時も自然と重くなるまで待つように受け身の姿勢で暗示して下さい。
なぜ両手足が重く感じる事が良いのかと言いますと、それは体の力を抜いてリラックスさせる為です。私達は緊張している時は知らず知らずの内に、体に力が入ります。その力を抜くのです。すると手足が重力でダランとします。その時に手足が何となく重く感じるのです。
だから「両手足が重い」と暗示をかけるのです。
④次は「両手が温かい」と2~3回暗示をかけます。これは「温感練習」と言います。この時は、あらかじめ両手の平を両足の太股の内側に置いているので、そこから感じる温かい体温を既に手に感じているので、暗示がかかりやすいと思います。そしてその手の平に感じている温かみが、だんだん上に上がって来るイメージを持って下さい。そして腕全体が温かく感じるようにすれば良いのです。
⑤次は「両足が温かい」と2~3回暗示をかけます。この時は両足をお湯に漬けているイメージを持ちながら暗示をかけると、本当に温かく感じやすくなります。そして足先の温かみが、だんだん上に上がっていき、最終的には太ももの付け根まで温かみを感じるようにします。
ところで何故、温かく感じる事が大切かと言いますと、それは血管を広げ血流を良くさせる為です。自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、リラックスしている時は副交感神経が働きます。そして副交感神経が働くと、血管が広がり血流が良くなる事によって手足に温かみを感じるのです。だから手足が温かく感じるという事は、副交感神経が働いてリラックスしている証拠なのです。
⑥最後に最初に行った「私は落ち着いている」の安静暗示を2~3回繰り返して終わりとします。
これで終了とします
ただし自律訓練法を行った直後に立ち上がる場合は、必ず消去運動を行ってから立ち上がって下さい。なぜかと申しますと、自律訓練法を行った直後は、副交感神経が働きの為、頭がボーとしたり、血圧が低くなったりしてるので、その状態で急に立ち上がると、ふらついて倒れる恐れがあるからです。だから危ないので、消去運動を行って現実感を取り戻して意識をハッキリさせてから立ち上がる事が大切なのです。
〇消去運動のやり方
自律訓練法を終えた直後に、両手を3回ほど強く開閉します。次に腕をしっかりと3回屈伸します。次に大きく伸びをするように深呼吸を数回繰り返して、最後に目を開けて終わりです。それから、ゆっくりと立ち上がって下さい。くれぐれもふらつかないように、気をつけて下さい。
なお自律訓練法を行った直後に立ち上がる必要がなく、そのまま座っていられる場合は、消去運動は行わなくても良いです。しかし消去運動を行った方が、スッキリしていいやと感じる方は、行ってもまったく問題ありません。
過敏性腸症候群の方は、教室、試験会場、職場、映画館、バス、電車など緊張する場面がいろいろとあります。そうした場所で、この自律訓練法を行えば、その場で座ったまま自分を落ち着かせる事が出来ます。気持ちが落ち着けば、腸も落ち着きます。この方法は簡単に自分で出来る過敏性腸症候群の治し方ですので、是非、実行してみて下さい。